2011年6月25日土曜日

Web制作が複雑化した経緯を現場10年の主観からまとめてみた

先日から方々で話題になっているウェブデザインに関するエントリー。
※各エントリーのまとめっぽい事書いてしまってますが「解釈違うよ」というご指摘ございましたらコメントください。。

上記エントリーを読み、私もWeb業界の端っこで生きている人間として思うのはコンセプトも企画も設計もデザインも色彩もガイドラインもコーディングもスクリプトも「どれが一番」とかじゃなくて全部大事で、私が関わり出した頃(10年ちょい前)に比べるとひとつひとつの業務が恐ろしく超複雑化+超高度化していってる(だからある意味益々面白くなって行ってる)ので、それぞれの分野で深くお仕事をされている方々からすると「自分のやっている仕事が一番重要だ」となったりするのかな、とか。いやなんか違うかもしれませんが。上手く言えないな。
で、なんでそう複雑化してきたのか、私の超主観でなんとなくの変遷を書き出してまとめてみようかなとか思った訳で。長い話になりますが・・・。
間違いやご指摘ございましたらぜひコメントください。

1999年頃。
Webデザイナー=デザイン(見た目)+コーディング。要するに全部1人でつくる。

入れ子の代表格。Web関係ないけど。
私も一応10年ほどWeb業界に携わってしまっています。1999年〜2000年といういわゆる「ITバブル」絶頂期。

世の中の仕組みもいまいち分からず、漠然とネットの可能性を感じて「Webデザイナー」として生きて行こうと動き始めた最初はWindowsのメモ帳を開いて手打ちのHTMLコーディング。
使い慣れないPhotoshopを触りながら画像を作ってフォルダにまとめてアップロードして。
今ではWebサイトは「構築」という言い方になりましたが、それは設計(IA)の重要性が一般的に認識された初めているからで、当時は「作り方」というレベル。しかも教科書的なものもそんなにないから、みんなタグ辞書片手に試行錯誤したりお手本になるようなサイトを見つけてはコードを読んで「ふむふむなるほど」とコーディングのイロハを身につけたり。実際のコーディングに関してはTableタグを何層にも重ねて罫線作ったりHTML5で消えるタグを使ってナビゲーションを組んだり。あとspacer.gifとかもあったなー。フォルダ階層やファイル名の付け方すらメチャクチャな時期もありましたが思い起こせば懐かしい思い出。
近年言われるセマンティック・ウェブと概念なんてこれっぽっちもなかったように思えます。

その頃の「Webデザイナー」っていうのはデザイン(見た目)からコーディングまで、要するに全部作ってしまう(というか人が居ないから作らざるを得ない)人が大半だったんじゃないかと。わかんないけど。

2000年頃。
Flashがもてはやされ始め、CSSもちょっとずつ使い始める。Webデザインはやっぱり「全部」。
トップページにあれなんやったかな、えーとそう、アレや!Flash!そのFlashでやね、キャッチコピーがシュイーンって流れてイメージ写真がシャシャシャシャーってなってバーンとこうロゴが出て来てやね、そんでな、で、右下にスキップ付けて欲しいねん。
まぁちょっと大げさですがこんな話が方々で聞かれた頃。Webデザイナーの新しいお仕事領域としてFlashが颯爽と現れた訳です。今までずーっと止まってる絵ばっかりだったからみんな食いついた。男の子は特にピカピカグルグルギュギュギュギューンってなるおもちゃが大好きです。別に悪い意味でなく愛を込めて言ってるつもり。実際私も「これは面白い!」とアニメーションに始まりActionScript1.0を覚え、そんなアニメーションやらインタラクティブコンテンツ(?)を細々作ったりもしました。

Web制作の中で人気になっていったFlashと同時に、Webサイトのデザインを定義するCSSも少しずつ本格化に向けて動き出しました。一般的に利用されているブラウザがあんまりサポートしていなかったりで実際の仕事に使われ出すのはもう少し後ですが、HTMLと画像だけで作っていたWebページデザインを、HTMLはテキストと構造を定義する、CSSはデザインを定義する、といった具合に役割を分担する事を可能にするもので、ある程度の規模のWebサイト構築に必要な「効率化」や「マニュアル化」という方向性がより具体的に見え始めた頃でもあります。

ただ、昨今のCSSみたいにhack(裏技的なもの)やらセレクタ(要素や属性によって動作を分岐させる技)やらはあんまり一般的じゃなくて実験的であったため、視覚的なデザイン・Flash・コーディングといった各作業はまだまだ「Webデザイナーの領域」だったのかなと思います。

2003年〜2005年頃。
「Webデザイン」でひとまとめに出来ていた要素が分断され、複雑化かつ高度化が進む。
話と絵は関係ないような。
Flashを動かすプログラムActionScriptが2.0としてバージョンアップされ、ビデオを動かしたりXMLファイルを読み込んだりサーバとデータをやりとりしたりと、できる事が増えたと同時に憶えなくちゃいけない事が増大。しかも前バージョンであるActionScript1.0と2.0の文法が全然違うのでほとんどまた1から勉強しなくちゃいけない。こうしてFlashの構築作業も深く深く・・・となりFlasher(直訳すると「露出狂」となるのでこの呼称がいいのかどうか議論されましたが・・・)という名前が浸透。さらに早い所はこういったプログラム的な所をスクリプターとして、UIやデザイン・アニメーションなど見た目部分での設計をアニメーターやらデザイナーやらと作業分担するようになっていたようです。

CSSもサポートするブラウザが増え、それに対応する形でテキストと構造のHTMLとデザイン管理のCSSのファイルをきっちり分けて構築する方法が一般化される。CSSはデザインを管理するけれど、それを重ねるHTMLの構造やルールをしっかりと共有した上で作る必要があるので、HTML+CSSの構築作業をまとめてコーディングと括るようになりました。CSSもさまざまな小技が一般化(主にIEが悪さするのでそうする必要があった)され、構築内容がますます難しくなって行ったように思えます。

こういうぐあいに構築方法が複雑になり管理するサイトの規模が大きくなって来た時の効率性や拡張性について要求から構造設計の見直しがされ、統一性・効率性・拡張性を兼ね揃えるためのCMSというウェブサイト管理の仕組みへのニーズが高まって行きました。この辺の始まりとしてはMovableTypeとかが代表格ですね。CMSの色々はさておき。

このように構造設計が見直される事で、当然「見た目のデザイン」においても構造設計への意識が求められるようになり、エモーショナルな要求に応えるデザイナーと構造設計的(建物の設計士的な役割)のインフォメーションアーキテクチャーとの分業が進んで行った感じがします。まぁだいたい仕事はセットでやるのですが、このように「考え方」を分ける必要性は出て来たよねーというわけです。

この数年。
各分野はさらに高度な専門性を求められる。
こうやってざっくり振り返るだけでもホントに数年前に比べてウェブサイトの制作には多くの人が関わるようになりました。しかもそれぞれの中身がどんどんと深くなっていってる。
構築の実作業内容だけでなく、初期段階でのコンセプト、全体のルール、構造設計、ビジュアルでのルール・色彩設計といったデザインのガイドライン、コーディングの際のやっぱり消滅しないInternetExplorerのための細かく複雑化させる対処色々、これからもっと求められそうなセマンティック、どんどん開発とブラウザ対応が進んで来たCSS3やCSS全般のHackやセレクタとかの技術的な事、最近ものすごく増えたUIをより良い物にするためのjQueryやPrototypeのようなJavaScriptなどなどなど列挙すれば切りがない。
そんな複雑怪奇な現場をまとめるディレクターの仕事でさえ枕詞に「アート」やら「テクニカル」やらが付いたり。もっと多いのかもしれないけど。

1人で全部管理するとか構築するとか、できたら良いのかもしれないけれど、私は長い目で見た時にそれだと永続性がないから企業としてはリスクになってしまうので、正直無理という現実よりもそういう短絡的な「エイヤー」はやめといた方が良いよという感じ。

脱線+わけわかんなくなってきたからまとめよう・・。
ホンマはよ平和にならへんかね。
専門性を求められる業界には「専門書」という本が不可欠で、さくっとAmazonでWeb制作に関する本を探すだけでも3,000冊を超える量。大杉。出版される量や種類は年々増えてるんじゃないかな。と、そういう所からも見えるのは「Webデザイナー」という一つの職種だったものが作業内容別に分断・職種化されていったという事。
そして各々が職種化することでより高度化していって、益々お互いの業務内容が理解され辛くなってきている。「あいつは俺の気持ち分からん」と。運営側も企画側も制作側も、みんな中身は複雑怪奇。だけど仕事してるのは結局人間なんだから、相互理解と協力の上で「どっちがどう」とかちっせー議論するんじゃなくてより良い方向に向かうためにお互いどうしたらいいか、ってゆー前向きな議論を一緒にもっとしたらもうちょこっとは平和な世の中に向かったりするんじゃないかなとかいう綺麗事でまとめてみようか。うんそうしよう。

そういえば各種テクノロジーは進化してるのに一向にあなたの仕事が楽にならないのはなんでやの?的な事を妻に聞かれて返せなかった。僕の仕事をロボットがやってくれるのはいつの日かしら。誰か教えてえらいひと。